ワセダシカ コラム
2021/10/25歯科衛生士の業務範囲とは?できること・やってはいけない事の例
歯科医院に欠かせない歯科衛生士は、歯科医師の診療補助をはじめとしてさまざまな業務に対応できる専門職です。
しかし、歯の治療といってもさまざまな工程・作業が存在し、歯科医師でなければ対応できない業務があることも事実です。
そこで今回は、歯科衛生士の業務範囲や、診療補助のなかで対応できる業務とそうでない業務の例も含めて紹介します。
そもそも「歯科衛生士」とは?
歯科医院に入ると、受付で患者の応対を行っているスタッフや、診察室内で歯の治療にあたっているスタッフなど、さまざまな人が働いています。
じつは歯科医院で働くスタッフは大きく分けて「歯科医師」、「歯科衛生士」、「歯科助手(または歯科アシスタント)」という3つの職種が存在し、それぞれ役割が異なります。
一般的に受付で患者の応対を行ったり、治療器具の清掃などの雑務を担当するのは歯科助手の役割であり、特に専門的な資格がなくても従事できます。
しかし、歯科医師と歯科衛生士は、法律で定められた専門職であり、資格をもっていなければ従事できません。
歯科衛生士の業務は「歯科衛生士法」とよばれる法律で定義されており、主に以下の3つの業務に大別されます。
- 1.歯科予防処置
- 2.歯科保健指導
- 3.歯科診療補助
しかし、これらの言葉は専門的であり、具体的にどのような業務なのか分からない方も多いことでしょう。そこで、次のステップからは歯科衛生士の業務内容をより詳しく具体的に解説します。
歯科衛生士が対応できる業務
歯科衛生士は主に「歯科予防処置」「歯科保健指導」「歯科診療補助」の3つの業務に従事することを紹介しましたが、それぞれの業務内容の例も挙げながら詳しく解説しましょう。
歯科予防処置
歯茎や歯の様子を確認し、むし歯などがないかを判断したり、むし歯を予防するための薬剤を口腔内に塗布したりするのが歯科予防処置の代表的な業務です。また、「スケーリング」とよばれる歯石取りを行うこともあります。
歯科保健指導
歯科保健指導のもっとも身近な例としては、幼稚園や小学校などで実施される「歯みがき指導」が挙げられます。また、老人介護施設や自治体などが主催する高齢者を対象とした口腔ケア指導も歯科衛生士の重要な業務のひとつです。
ちなみに、歯科保健指導は歯科医院に勤務する歯科衛生士だけでなく、保健所に勤務する歯科衛生士が担当するケースも少なくありません。
歯科診療補助
歯科衛生士の主なイメージとして、歯科医師の補助を行う姿を連想する方も多いでしょう。
このような業務は歯科診療補助とよばれ、歯科医院における歯科衛生士のメイン業務といっても過言ではありません。
具体的な業務内容としては、患者さんに対して治療の手順や内容を詳しく説明したり、歯科医師のサポートとして吸引などを行ったりすることが該当します。
また、治療の前段階として歯の表面をクリーニングしたり、レントゲン室への誘導や説明などを行ったりすることも歯科診療補助にあたります。
歯科衛生士がやってはいけない業務
歯科衛生士がやってはいけない業務とは、一言でいえば「歯科医師でなければできない業務」が該当します。特に歯科診療補助においては明確な線引きを把握しておかないと法律に抵触することもあるため注意が必要です。
具体的にどのような業務が歯科衛生士の範囲外業務にあたるのか、以下に代表的な例をピックアップしてみました。
- ・抜歯
- ・歯を削る
- ・歯茎を切る
- ・注射による麻酔
- ・詰め物や被せ物の装着
- ・レントゲン撮影
ちなみに、歯科診療補助の業務の一例として「レントゲン室への誘導や説明」を挙げましたが、歯科衛生士はレントゲン撮影の準備や患者への説明はできるものの、レントゲン撮影の作業そのもの(ボタンを押す行為)はできません。
また、歯の治療において痛みを緩和するための麻酔は、歯茎の表面に薬剤を塗布する表面麻酔と歯茎に注射をする麻酔の2種類が存在します。
歯科衛生士は表面麻酔には対応できますが、注射による麻酔は歯科医師でなければ対応できないため注意が必要です。
ちなみに、歯科衛生士がやってはいけない業務は「絶対的歯科医行為」とよばれ、いかなる場合でも歯科医師でなければ行ってはいけません。
一方、歯石の除去や表面麻酔の塗布といった行為は「相対的歯科医行為」とよばれ、歯科医師が指示を出した場合や歯科医師の監督下でのみ許されます。
そのため、歯科衛生士が対応できる業務だからといって、必ずしも歯科衛生士の判断だけで行えるとは限らないことも覚えておきましょう。
歯科衛生士の業務範囲を正しく理解しておこう
専門資格をもった歯科衛生士は全国的に慢性的な人材不足に陥っており、人手に余裕のある歯科医院は決して多くありません。
そのため、なかには歯科衛生士の範囲外業務であるにもかかわらず、患者さんや医師から対応を求められる可能性もあるでしょう。
しかし、万が一歯科衛生士が範囲外の業務を行ってしまった場合、歯科衛生士法違反に問われることがあります。
そのような事態にならないよう、歯科衛生士としての業務範囲を正しく理解しておくことが重要です。